理想の細い箸(1)

すますのこと

2019年5月17日

3年ほど前、事務所から歩いて数分のところにある日本料理店「新富 なぐも」で食事をしたときのこと。

そのお店で使われているお箸に、惹きつけられました。

細くて端正な佇まい。手にとって使ってみると、ひと口が程よく小さく、

なぜだか丁寧に口に運びたくなる、いい意味での緊張感と特別感。

口の中に入れたときの箸の存在感がすっとしていて、滑らかで心地良い。

お料理の美味しさとあいまって、感動してしまったのです。

 

 

毎日の食事は、楽しみであり、リフレッシュ。一日の中でのひと区切り。

それまでも食の時間を大切に、日々美味しく食べてはいたのですが、

あらためて、丁寧に食べることを意識してみると、その時間が上質で尊いものに思えたのです。

「適当に食べる」ということは「適当に食べ終わること」。当たり前なのですが、そういうことだと。

 

 

お箸を変えただけなのに、食事がちょっと特別になり、上質な時間に変わる気持ち良さ。

そんな心地よさに気づき、自宅でもそんな食事がしたいと、

細くて軽やかな、理想的なお箸とは?  と考えはじめました。

 

 

細いお箸に意識を向けて、探して使ううちに、いろいろな気づきがありました。

 

 

ベーシックな木地を生かした箸は、使い心地は優しいけれど

使い続けるうちに、歪みがでたり、全体にちょっと毛羽立った感じになり、劣化が早いこと。

 

 

塗り箸は綺麗だけれど、つるつるし過ぎてやや食べにくい。

金属の細い箸は、形はいいけれど、ちょっと重過ぎて手が疲れてしまう。

食べやすさ、掴みやすさ優先で、箸先に滑り止めのついたお箸は、口に入れたときに箸先がざらつく。

 

 

そんな中で具体的に見えてきた、理想のお箸。

食材の感覚に集中したいから、気配がないくらいシンプルなもの。

素材は木製がいいけれど、使い続けても箸先が毛羽立たないように、

つるつるし過ぎない塗り箸で、とにかく軽いもの。

 

 

けれど、なかなか欲しいと思うお箸は見つかりません。

ならば、作ってみようと思いました。

すますの箸づくりは、こうして始まりました。

 

 

仕草が美しくなる細箸