2019年1月26日
フリンジのこだわり
すますのこと
使い始めたばかりの手ぬぐいは、切りっぱなしの両端から糸がほどけてきます。
それが自然のフリンジになって、手ぬぐいのあのいい雰囲気になるのです。
ただ、今回の企画は「大きな手ぬぐい」です。
大きな手ぬぐいだと、ほどける糸の長さも、量も、普通の手ぬぐいの比ではありません。
長いほつれ糸が絡まってよれよれな感じになると、とてもさみしい…。
買っていただいたお客さまに、絡まった糸を切るお手間をかけてしまうのも心苦しい…。
そこで、すますの大手ぬぐいは、あらかじめ、端をフリンジ状にすることに決めました。
決めるのは簡単ですが、作業はたいへんです。
普通の手ぬぐいは刃物で生地をカットしていますが、フリンジの長さを揃え、短いほつれ糸が
出ないようにするため、すますでは、すべて手で生地を裂いています。
生地を裂く担当は妹・ミオ。
裂くときに力加減を間違えると、裂き始めと裂き終わりがきれいにならないのですが、妹はピーっと一直線。
何十枚分も手作業で裂き続け、終わったら今度はフリンジづくり。
これもすべて手作業で、糸を抜き続けます…ひたすら、ひたすら。
大手ぬぐい一枚あたり約30分かかります(最初は50分以上かかり、「これを何枚つくるんだ…」と呆然)。
企画当初は工場への外注も考えてみたのですが、見積もりの相談時点で「そういう作業はしたことないですねえ。アルチザンの作業です…まだわかりませんが、かなりの額になるかもしれません」と言われ、「まあ、そうですよね」と。
もともと手作業が好きなので、それなら自分たちでやろうと決めました。
そこからは、ひたすら、ひたすら、糸抜きの日々。
日当たりのいい事務所の窓際で、黙々とふたりで糸を抜く作業は、
まるで、ポルトガルのおばあちゃんにでもなったような心落ち着く時間でした。
そういえば、わたしたちは両親が働いていたため、小学生の頃から放課後家に帰るといつもふたりで過ごしていました。
姉・ユイは刺繍が好きだったので、こたつで針をさしながら。妹はとなりでドラマの再放送を見ながら。
ぽつぽつ話をしながら、宿題をしたり、お茶を飲んだり。
ふたりで糸を抜いていると、その頃のことが思い出されて、じんわりしました。